【ベンチュラ再考】なぜ今、ハミルトンの「変な三角の時計」に惹かれるのか？

最近、ハミルトンのベンチュラ（Ventura）が、どうにも気になって仕方ありません。

IT業界でマネジメントを生業とし、音楽機材やキャンプガジェットには目がない45歳の私ですが、正直、20代の頃は「あの変な三角の時計ね」くらいにしか思っていませんでした。奇抜すぎて、自分のスタイルじゃないと。

しかし、海外出張のフライト中や、少し落ち着いたファミリーキャンプの夜にふと画像を見ていると、その非対称なデザインが強烈な個性を放ちながらも、妙に落ち着いて見える。これは年齢のせいなのか、それとも時代が追いついたのか？

この衝動を抑えきれず、ベンチュラを徹底的に調べてみました。そして、ただの「変な時計」では片付けられない、時代を超えた本質的な価値が見えてきたのです。

一体なぜ、半世紀以上も前の「反逆の三角形」が、IT業界のマネージャーである私の心を今、捉えて離さないのか？

50年代の「反逆児」：ベンチュラの歴史的意義とイノベーション

ベンチュラの魅力を語る上で、この時計が生まれた背景を知ることは不可欠です。

1. 世界初の「電池式時計」というイノベーション

ベンチュラが発表されたのは1957年。

当時、時計はゼンマイを動力とする機械式が主流でした。そんな中でハミルトンは、世界で初めて電池を動力とする「エレクトリック・ウォッチ」としてベンチュラを世に送り出しました。

この時計は「変」なのではなく、「反逆の象徴」であり、「イノベーションの塊」だったということです。

当時、主流だった機械式の常識から脱却し、「ムーブメントが変わればデザインも変わる」という未来志向のコンセプトは、まさにサービスデザインやUXの革新にも通じるものです。これは、技術と美意識を両立させた、最初期のウェアラブルデバイスだったと言えるでしょう。

IT業界の人間として、私はこの「既存の常識を打ち破るパイオニア精神」に強く共感します。私が経験した『レガシーシステムからの脱却』や『アジャイル開発への移行』と同じ、痛みを伴うが未来を拓くイノベーションの熱狂を感じさせます。

2. 伝説のインダストリアルデザイン

デザインを手掛けたのは、著名なデザイナーリチャード・アービブ。

雷をモチーフにしたとも言われる非対称（アシンメトリー）な盾型フォルム。従来の丸型・角型の常識を痛快なまでに破壊したデザインです。発表当時はあまりにも前衛的すぎると賛否両論だったそうですが、この「無視できない個性」こそが、ベンチュラを半世紀以上も語り継がれる傑作にした要因です。

このデザインを、私の愛するアメカジ、特にデニムとスニーカーにどう合わせるか？と想像するだけでワクワクします。武骨なデニムと、このSF的な非対称フォルムの融合……たまらない。

ベンチュラを「カルチャーアイコン」にした２人のレジェンド

しかし、ベンチュラが単なる技術とデザインの粋で終わらなかったのは、「人」の存在があったからです。

1. ロックンロールの帝王：エルヴィス・プレスリー

ベンチュラの存在を一躍、世界的なものにしたのが、エルヴィス・プレスリーです。

彼は1961年の映画『ブルーハワイ』の中でこのベンチュラを着用し、以降、公私にわたって愛用しました。ロックンロールという当時の「反逆の音楽」を体現した男が、時計界の「反逆のデザイン」を選んだ。この組み合わせは、必然だったのかもしれません。

私がドラムセットの前に座り、強くハイハットを叩き、自分のグルーヴを刻む瞬間。その腕にベンチュラがあったら、単なる時を刻むのではなく、「自分のルールで生きる」というロックの魂を腕に巻いている。そんな高揚感が得られるでしょう。

2. 映画『メン・イン・ブラック』のエージェント

そして現代において、ベンチュラを再定義したのがSF映画『メン・イン・ブラック (MIB)』シリーズです。

地球の平和を守るエージェントたちが着用するこの時計は、宇宙的なミステリーと、先進的なガジェット感を体現しています。ガジェット好きの私の心はここで完全に撃ち抜かれました。

この反逆と先進性が、現代のビジネスシーンを駆け抜ける私とどうリンクするのか？

ITマネジメント層の視点：ディスラプター精神を腕に

様々な経験を積んだ今、強く思うのは「本質的な価値」と「自分の個性」です。

ベンチュラは、私たちが「人と違うこと」を恐れない、「知的な遊び心」と「本質を見抜く視点」を代弁してくれる最高の相棒になるはずです。

比較要素	従来の機械式時計（丸型）	ハミルトンベンチュラ
デザインの立ち位置	「正統派」「伝統」「格式」	「異端」「革新」「挑戦」
象徴するもの	堅実さ、社会的地位	個性、知的な遊び心、イノベーション
ITマネジメント層の視点	既存ビジネスモデル、階層と伝統（リスクを背負って守るべきもの）	ディスラプター精神、非連続なイノベーション（未来を切り拓く武器）

百聞は一見に如かず。実際にデニムやガジェットと並んだベンチュラの姿を見て、この衝動が本物かどうか、最終確認をしてみましょう。

ベンチュラの歴史的な意義を視覚的に整理します。

graph TD
    A[1957年: ベンチュラ誕生] --> B{世界初の電池式};
    A --> C{非対称デザイン};
    B --> D[既存の機械式からの脱却];
    C --> E[リチャード・アービブ<br>のデザイン];
    D & E --> F[反逆とイノベーション<br>の象徴];
    F --> G[1961年: エルヴィス・<br>プレスリー着用];
    F --> H[MIBシリーズ<br>でのアイコン化];
    G & H --> I[カルチャーアイコン<br>としての確立];
    I --> J[現代のITマネジメント層に<br>響くディスラプター精神];

私も、どのベンチュラにするか、夜な夜な時計店のサイトを眺めては悩んでいます。『クォーツのH24411732』の潔いシンプルさか、それとも自動巻きの「エルヴィス80」シリーズの流れを汲む現代的なモデルか…。この迷いこそが、ベンチュラ選びの最高の楽しみなのかもしれませんね。