はじめに
自宅の書斎で、お気に入りのジャズレコードを聴いていた時のこと。 友人が自作したスピーカーから流れてくる音に、僕は完全に心を奪われてしまいました。 ボーカルの息遣い、ウッドベースの弦が震える音、ドラムのシンバルが響く空気感...。
まるで、その場で演奏されているかのような、とてつもないリアリティ。 市販のスピーカーが奏でる、作りこまれた「聴きやすい音」とは全く違う、 まるでエフェクターを通していない「True Bypass」の音を聴いたような、そんな衝撃だったんです。
この「超自然」な音の正体は、スピーカーのエンクロージャー(箱)にありました。 その友人が作ったのは、スピーカーマニア垂涎の的、「バックロードホーン型」と呼ばれるスピーカーだったのです。
バックロードホーンとは何か?
スピーカーユニットは、振動板を前後に動かすことで音を出します。僕たちの耳に届くのは振動板の前面から出る音ですが、実は後面からも同じ音が逆位相で出ています。 一般的なスピーカーは、この後面の音を箱の内部で吸収したり、特定の周波数帯だけを増幅させて利用します。 しかし、バックロードホーン型は少し違います。
バックロードホーンは、スピーカーユニットの後ろに、まるで管楽器のような長い「音の通り道(ホーン)」を設けることで、後面の音を効率よく増幅します。 このホーンは、スピーカーの振動板を前方だけでなく、後方からも強力に「ロード(負荷)」することで、スピーカーユニットが軽快に動き、非常にレスポンスの良い音を出すことができます。 その結果、まるで生きているかのような、生々しい「超自然」な音像が立ち上がるのです。
バックロードホーンとバスレフ型の違いを徹底比較
世の中のスピーカーの多くは「バスレフ型」という方式を採用しています。 ここで、一般的なバスレフ型と、マニアックなバックロードホーン型の特徴を比較してみましょう。
| 項目 | バスレフ型スピーカー | バックロードホーン型スピーカー |
|---|---|---|
| 構造 | スピーカーユニットと、低音を増強するための「ポート」と呼ばれる穴を持つシンプルな構造。 | 内部に非常に複雑な、折り畳まれた長いホーン(音道)を持つ。 |
| 低音再生の仕組み | ポート内の空気の「ヘルムホルツ共鳴」を利用して特定の周波数帯の低音を増強する。 | 後面の音を長いホーンで増幅し、効率よく低音を再生。 |
| 音の特徴 | 量感があり、迫力のある低音が出やすい。反面、低音に「ポートの音」が加わるため、やや人工的な響きになることも。 | 力強く、乾いたタイトな低音。レスポンスが良く、音の立ち上がりが速い。音場表現に優れる。 |
| 能率 | 比較的低い。アンプのパワーが必要になる場合も。 | 非常に高い。小出力のアンプでも十分な音量が得られる。真空管アンプとの相性が良い。 |
| 自作難易度 | 比較的容易。箱とポートの設計計算もシンプル。 | 非常に高い。複雑な内部構造を正確に組み立てる技術と根気が必要。 |
| 市場性 | 多くのメーカーが採用しており、市販品のラインナップが豊富。 | 構造が複雑で大型化するため、メーカー製の製品は希少。自作の世界が主流。 |
自作バックロードホーンがもたらす感動
この比較表を見ていただければわかるように、バックロードホーンは決して万能なスピーカーではありません。 しかし、その手間と苦労を乗り越えた先に待っている音は、市販の量産品では決して味わえない特別なものです。
僕もいつかは、自分の手でバックロードホーンを作ってみたいと思っています。 特に、Fostexのフルレンジユニットと組み合わせて、音楽の空気感まで再現できるようなスピーカーを作れたら最高ですね。 初めて音が出た瞬間の感動は、きっと何物にも代えがたいものがあるでしょう。 この感覚は、ITプロジェクトをゼロから立ち上げ、リリースにこぎつけた時の達成感に近いものがあるのかもしれません。
もし、この記事を読んでバックロードホーンの世界に興味を持ったなら、ぜひ一度、キットから自作にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。 組み立て済みの製品はほとんどありませんが、カット済みの木材がセットになったキットなら、初めての方でも挑戦しやすいはずです。 その先に待っているのは、きっと、音源の良さをストレートに伝える「True Bypass」な音。
一度その音を聴いたら、もう後戻りはできません。 「音を聴く」から「音を体験する」へ。 きっと、あなたのオーディオライフは劇的に変わるはずです。
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